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2006年 08月 02日
日曜日に小樽に帰ったメインの目的はその日の夜の花火をみるためだった。花火のために出かけるなんて、ほんとうに久しぶりだった。札幌の花火大会はだいたいが金曜日の夜だから仕事をしている時間と重なったりして行けないし、そもそもあの人込みの中にわざわざ出かけていくのが億劫だったからに他ならない。いや、負け惜しみではなく。けっして!
小樽の花火大会は「潮祭り(うしおまつり)」という大きなお祭りのフィナーレを飾るもの。7月の最終日曜日と決まっているため、毎年毎年「ある試験」とカッチリ重なってこちらも全然行くチャンスが無かったんだけど、今年は日程的に上手くいってなんのシガラミもなく友人の誘いに尻尾を振っての初参加となった。早い時間から席をとってビールを飲みながら花火を待つのだという。夕方の4時から席取りだという。花火は8時からだという。ほぉ。 私がイメージしていたのは会場にセッティングされたビアガーデンのようなスペースにひとつテーブルを陣取って、そこでダラダラと過ごす私たちの姿。しかし、集合時間よりも少し遅れて到着した私をまっていたのは埠頭の地面の上にレジャーシートを広げてグダグダとくつろぐ小樽市民達だった。軽くカルチャーショック。まだ4時というのに、傾きかけた日差しに照らされた以上にその顔はすでに赤い。 徐々に徐々に夕暮れが深くなって、青みが強くなって、いつのまにか薄暗くなって、という光のグラデーションと港の潮風にトップリとつかりながら周りの人と同じようにグダグダと泡の消えたビールを飲む。そしてグダグダとお喋りしながら、のんびりと花火を待つ時間。ああ、贅沢です。今年一番の贅沢な時間だったかもしれないな。 埠頭の上に集まっていた人たちがごろごろしている姿は浜で休むアザラシの群れみたいだったけれど、6時、7時と花火の時間が近づくにつれ、それは「群れ」と言うよりも「大群」となっていく。埠頭の上は照明も少なくて暗くなっていく一方だから、みんなのシルエットしか見えなくって、ますますその景色は何かの動物がモヤモヤと大群でうごめいているように見えて酔いも回る。自分もその中の一人なんだと思うとさらに不思議だ。 花火は1時間かけて3千発を打ち上げる。合間合間にスポンサーである地元企業の名前がアナウンスされたりするし、周りはたぶん100%小樽っ子だ。場を支配する暖かな共有意識みたいなものがとてもとても心地いい。間近で見る花火は音と光がちゃんと重なってもちろん楽しいし。 で、花火が終わった瞬間にほとんどの人が立ち上がって「はいはい、撤収撤収!」と言わんばかりにパタパタと片つけてゴミをまとめてサッサと帰路につくその変わり身の素早さも面白かった。ある意味統率がとれていてやっぱり動物の群れみたい。なんかそういう気質があるのかな。 花火が終わって、そのまま皆で友人の勤めるバーまでテクテクと歩いた。急な坂を登り、家と家の間の真っ暗な細い路地を通り、古い石垣を飛び降りて、使われていない廃線を横切ると、飲み屋街の小さなお社の裏にでる。「裏から失礼いたしました!」と各自クルリと振り返って手を合わせて挨拶していたら、それをみていたオジさんに「えらいねぇ。」と褒められて、みんなで「えへへ」と照れた。ああ、私たちは本当は何歳なんだろう? 目的のバーに入ろうとすると、目の前を歩いていたカップルもそのお店に入るようで、後についてゾロゾロと扉をくぐると、実はその子は小学校からの同級生とそのダンナだったことが判明し、ここでも地元パワー炸裂だった。素晴らしい。会えてよかった。結婚してもっとキレイになったわねぇ、浴衣も似合ってるしさ、ちぇっ、ちぇっ。 カラッポだった私の中の花火タンクはおかげさまで満タンになったし、それ以上に何かが満タンになって帰って来た。
by mogu_ogu
| 2006-08-02 00:22
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