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2006年 08月 17日
北海道の東、知床半島と根室半島のちょうど真ん中あたりにチョロっと飛び出るように野付半島というところがある。非日常を感じられるような風景が見たくて一泊だけの小さな旅に行って来た。 地盤沈下や海流によって何千年もかけてつくられた砂嘴。半島を走る道路は外海と野付湾に挟まれて両側が海。それだけで不思議な感覚を覚える。海の上を走っているみたい。 つねに風が強く吹いていて、そんなことも「海の上」にいることを実感させる。 耳を澄ましても風の音しか聴こえない。海の波は穏やかだからそんな音は風に掻き消されてしまうんだ。吹き抜ける強い風と大きな空。 半島の中ほどにあるネイチャーセンターに車を停めて30分テクテクと歩くとトドワラに着く。 もともとトドマツの森だったところが、海水の浸食で枯れ、風化し、そのまま残されている。その日は重たそうな雲が空を埋めていて荒涼とした風景をさらに盛り上げていた。すごい。 何千年も前からこうなんだな。そういう時間の重さが場の空気を濃くしているように感じて、その重さに心が潰されたみたいになって涙が出そうになる。あいかわらず強い風は髪をグシャグシャに掻きまわし、水面は不思議な模様を描く。ときどき小さな水鳥が高い声で鳴く声もなんだか哀しく聞こえる。 私が日々の日常を繰り返している時間の流れと、この場所の時間の流れは物理学的には同じはずなのに、あきらかに密度も速度も違うんだ。そういうことは実際に自分の目で自分の耳で自分の体で感じないと分からなかった。 「ああ、来て良かったな。」と何回も口に出して言った。
by mogu_ogu
| 2006-08-17 13:42
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